ホリエモン「寿司職人が何年も修行するのは馬鹿」丁稚奉公はもう古い?ノウハウはお金で買う時代

先日、ホリエモンこと堀江貴文氏がツイッター上で「今時、イケてる寿司屋はそんな悠長な修行しねーよ。センスの方が大事」などと発言して話題になっていましたね。

ホリエモンは以前から自身のメディアやテレビ出演などを通して、長い時間をかけて修行を行うのは非合理、東京すしアカデミーなら最短2ヶ月で寿司職人に成れると主張していました。

東京すしアカデミーは2011年にガイアの夜明け、2015年にはカンブリア宮殿でも取り上げられている、寿司職人を養成するための専門学校です。最短で2ヶ月で寿司の技術を一通り学べるコースがあり、“飯炊き3年、握り8年”といわれる厳しい修行の世界とはかけ離れた効率的な養成施設です。ワタクシもガイアの夜明けで見てこれすごいなあと印象に残ってました。

下積みなど時間の無駄と考えるホリエモンは、以前からこの東京すしアカデミーを絶賛していましたが、こちらの記事の最後で「やはり一流を目指すとなると、現在第一線で活躍する巨匠たちの辿ってきた道、つまり“飯炊き3年握り8年”を実践するのが一番確かな道です(以下略)」と反論されたことから、前述のツイートとなったようです。

確かにホリエモンの意見はもっともで、10年の修行期間を最短2ヶ月で効率的に済ますことができれば、寿司職人を目指す若者の側からすれば素晴らしいことです。

ただ一方、上の反論記事の主張するように、日本の伝統食であり美食の象徴でもある寿司の世界で一流を目指すなら、長い修業を経てこそという気がしてくることも確かです。修行を通じて技術以上の何かを見出すことが、二流と一流の大きな違いというか・・・

長い下積み期間は必要なのか、あるいは技術を最短で身につけられる専門学校が良いのか?今日はその辺りについて考えてみたいと思います。

下積みはいらない?伝統の技術を学ぶ丁稚奉公はノウハウと労働力の不等価交換だ

そもそも「下積み」とは何なのでしょう?
辞書には「人の下に使われていて目立たない地位にあること。能力などをふるう機会に恵まれないこと。」とあります。

サラリーマンでいえば、若手のうちは雑用や補助的な仕事をやらせて、重要な仕事を任せてもらいないということでしょうか。会社には役職があって上が詰まっているので、仕方ないところもあるのでしょうね。もっとも、最近は単純な雑用は派遣社員が行うようになっているので、雇用に高いコストを払っている正社員は若手であっても、ある程度の仕事をさせられるのが一般的ではないでしょうか。

しかし、職人の世界はサラリーマンとは全く様相が異なります。職人の世界は未だに丁稚奉公ですから、若手は重要な仕事をさせてもらえません。数年間は安い給料でこき使われます。伝統産業の場合は住み込み給料無しで数年間タダ働きの世界もあるでしょう。

これは皆さんご存知の通り、長い下積み期間が技術の習得に必要だからではなく、虎の子の技術を教える対価を自分の労働力で支払っているわけです。修行に入ってきていきなり技術を教えて、あっという間に独立されたんじゃ成り立ちません。

サラリーマンの世界ですら自分のポジションを守るために若手に指導しない人間が問題になるくらいですから、技術が自分の懐と直結する職人の世界ならそう簡単に技術を渡すわけにはいかないのです。

お金のない若者が、自分の労働を対価に技術を教えてもらうという、一見するとよくできた制度に見えますが、それにしても下積み期間が長過ぎるような気がします。気前のいい親方なら数年の奉公で技術を教えてくれるでしょうが、下手をすれば10年以上奉公をさせられる恐れもあります。

ただでさえ下積みを嫌がる現代の若者ですから、こういった長い丁稚奉公の期間に耐えられる訳がありません。最近は職人の世界では、若手があっという間にやめてしまって困っているそうです。ある意味自業自得なんですけどね。

そうして技術の伝承が行えずに困っている業界が多い中、東京すしアカデミーのような職人技術を教える専門学校や個人が増えてきています。今後は丁稚奉公は激減し、こうした専門的な指導を”お金を対価に”受けて技術を身に付けるのが一般的なスタイルになっていくのでしょう。

10年寿司屋で修行していくらの労働力を対価として支払ったことになりますか。年収300万だとしても3000万円ですよ。もちろん給料が全くもらえないわけではありませんが、安い給料で働かされるわけですから、相当な労働力を搾取されることになるわけです。

その点、職人技術を教えてくれる専門学校に通えば、数十万なり百数十万支払って、直ぐに効率的なカリキュラムで技術を身につけることが出来るわけです。これなら借金してでも学校で学んだほうが経済的でしょう。

丁稚奉公のシステムは、教えてもらう技術よりも多くの労働力を納めなければいけない不等価交換であるということに、現代の若者は気づいてしまったということでしょう。

下積み無しで一流の技術が身につくのだろうか

しかし、いくらお金で対価を支払うことによって効率的に短時間で職人技を身につけることが出来るといっても、本当にトップクラスで戦える技術が身につくのか疑問だという人も多いのではないでしょうか。

ホリエモンに必死に反論する人もこのあたりを気にしている方が多いようです。ある程度は形にになる技術が身についても、トップクラスの本当の技術までは身につかないのではないか、本当の職人技は10年単位の修業を経てこそ身につくものだ、という考え方ですね。

しかし、ホリエモンも話題を出していますが、先日こんなニュースが話題になっていました。

開店からわずか11ヶ月の飲食店が「ミシュランガイド京都・大阪2016」に掲載され話題となっています。そんなドラマのような快挙を成し遂げたのは
www.mag2.com

東京すしアカデミーと同じような調理師学校「飲食人大学」の卒業生と生徒で切り盛りしている「鮨 千陽」が「ミシュランガイド京都・大阪2016」に掲載されたというのです。寿司を握るのは全員が経験1年未満の寿司職人素人だそうです。

もはやこうなってくると、伝統の技術や長い修業というものが何なのか分からなくなってきますね。

確かに、専門学校で2,3ヶ月で学ぶものと、10年以上の修業を経て学ぶものには僅かながらにも違いがあるのかもしれません。しかし、その差が圧倒的多数の消費者の舌で判別できるかどうかはまた別の問題です。

現に数ヶ月の修行で寿司職人になった人が握った寿司がミシュランで星を獲得することも出来るのです。

もちろん世の中には本当に長い年月の修業によってのみ体得できる技もあるのかもしれません。しかし、知れば簡単に習得できる技術までもが、長い修業でのみ習得できるかのごとく大げさに考えられている節もあります。

こういった、すぐに教えてもらえさえすれば比較的短期で習得できる技術を学ぶために、長い修行期間を費やすことは非効率であると言わざるを得ません。

たとえそれで一流の職人には成れなかったとしても、短期間で基礎的なことを叩き込んでもらえれば、その先の修業の効率も上がってきます。

ノウハウや技術はお金で買う時代

技術がブラックボックスになっている職人の世界は、外から見ているとものすごい技術に見えてしまうものですが、知ってみれば実は少しの鍛錬で誰でも出来るものだったりするものです。

不動産投資でセルフリフォームをやっている時に、どうやって修理してよいか分からず絶望していたものが、お金を払って習いに行ったら実に簡単にできてしまうものだと分かった事があります。

自分が知らなかった時には何かとてつもない技術を要するように思えていたものが、実は簡単にできるものであったということは割とよくある話です。

下積みばかりで、肝心なことを教えてもらえるまでに長い修行という名の労働力の搾取が続く丁稚奉公の制度は、もはや現代では通用しなくなってくるのではないでしょうか。

現に、ネットを探してみれば、寿司だけではなくあらゆる料理を学べる学校や個人の教室が見つかります。

あるいはリフォーム技術を教えてくれる教室も開催されています。その他の職人技も、短期のカリキュラムで教えてくれる専門学校は多数あります。

職人技を体系的に教えてくれる教育機関が揃っていなかった昔は、丁稚奉公の制度が最適だったのでしょう。しかし、教育機関が揃い、若者がアルバイトでも借金でもお金を用意できるようになった現代、丁稚奉公という制度は崩壊に向かっていくのは確実でしょう。

丁稚奉公のコスパの悪さを若者が悟り、下積みを嫌がるようになってしまった以上、お金を対価に効率的なカリキュラムで技術を身につけるという流れは止まることはないのでしょうね。

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