おいしい話は歩いて来ない!ジョイントベンチャーはメリット・デメリットで考えろ
私は今、自社倉庫内の整理をしておりまして、農産物保管用の大型冷蔵庫を解体してヤフオクで売ろうかなと思案しているところです。
なぜ倉庫内にそのようなものがあるのかというと、数年前まで農産物を販売するネットショップを運営していたからなのです。現在メインとなっている商材と並行して数年間販売していました。
結果的に儲からなかったので撤退したわけですが、そもそも参入したキッカケは、農産物をブランディングして売ろうという話が舞い込んできたからでした。まさにビジネスの話が足を生やしてやって来たわけです。
当時私は、現在メインとなっている商材の仕入れに苦戦しており、ECの業績も今ほど良くない状態でした。良くないといっても十分に生活はできるレベルでしたが、アフィリエイトで月7桁稼げていたアフィリエイターを辞めてまで起業した割には爆発的な儲けにつながっておらず、モヤモヤしている状態でした。
そこに、農家とコネクションがあり農産物を原価で仕入れられるという怪しげな男Aからビジネスの話が舞い込んできたのです。若干の怪しさは感じたものの、Aがよく知っている人の知り合いだったのと、儲かるビジネスに飢えていたため飛びつきました。
まあ結果として大きな損失を抱えて撤退することになったわけですが、色々と勉強になったことは確かです。本日は人と組んでジョイントベンチャー(JV)をする際の注意点と、良いジョイントの条件について考えてみたいと思います。メリット・デメリットを考えないと大変なことになるかもしれませんよ。
この記事のもくじ
おいしい話なんて無い!あっても親切にあなたのところに向こうからやって来ない
この飛びついた美味しい話というのが、「非常に美味しい農産物があるのだが、ブランディング出来ていないため非常に値段が安い。これを直接農家から仕入れられるコネがあるから、一緒に売らないか。」という話でした。
私はECで商品を販売するノウハウがある、Aは有利な条件で質の良い農産物を仕入れられる、普通に考えれば完璧な役割分担が出来たジョイントですが、始めてみて色々と妙な点が出てきました。
私は早速新しいネットショップを立ち上げ農産物を販売する準備を行いましたが、Aは不思議とECでの販売にそれほど興味がない様子でした。それどころか実は卸先を既に見つけているというのです。ネットも期待しているけど、無理にネットで売らなくても太い販売先を既に確保していると。
この時点で大きな疑問点が出てきます。①仕入れができる②販売先がある、ということでもう商売として完成しているのです。自分一人でビジネスモデルを作り上げているのに、なぜ私と組みたがる??
ジョイントベンチャーを始めて1週間と経たないある日、Aから焦った様子で電話がかかってきました。「急に事情が変わった。既に確保している卸先に卸せないかもしれない。先方が法人としか取引をしないと言っている。この話が無くなったら莫大な損失になる。」というとのです。
色々焦った様子で喋っていましたが、要約すると私の法人名義で卸先に農産物を販売できないかということでした。Aは個人でビジネスをやっているので、法人を立ち上げている私の会社名義で卸先に販売したいというのです。
Aのあまりに必死な様子と、私もやるからには本格的にニュービジネスを行いたいという思いから、私が出資して新会社を作ることを決意します。私は出資するとはいえ、経費を引いた利益は折半する約束でした。
私が立ち上げた会社名義で大型のプレハブ冷蔵庫やその他必要な農業機器を購入して、什器も揃え、パッケージも自分でデザインして作り、準備が整いました。
準備が整い、Aと私と2人で卸先の企業にプレゼンに出向いたのですが、その道中でAが怪しげな話を持ち出してきたのです。某グレーゾーンのビジネスに使う機器が入手できたので買わないかという話でした。これはめったに手に入らない大きなチャンスですよとしきりに薦めてきます。
この時、実にタイムリーな話題で、前日のニュースでこのビジネスがグレーではなく完全な黒という扱いになるという報道を見たばかりでした。疑問に思って問い詰めたところ、実はA自身がこのビジネスをやっていて撤退するので人に譲りたかったというのです。
おそらく出会ったばかりの私がはいはいと話を聞いて、あっという間にジョイントベンチャーの話がまとまって、こちらが資金まで出したので、こいつならイケルと思ったのでしょう。違法になるビジネスから撤退して私に売りつける気だったようです。
この時点でこいつはヤバイと思いました。今回の農産物販売の件にも絶対になにかあると悟りました。前述の通り、仕入れられて売り先もあるのだから人と組んで利益を折半する動機がないのです。卸先が法人としか取引しないというのなら法人を立ち上げればいいわけです。新会社法以降、株式会社なんて25万円もあれば作れるわけですから、自分で作ればいいわけです。人と組んで利益を折半するほうが大幅に損です。
怪しいと思った私は農産物について徹底的に調べました。するととんでもない事実が判明するのです。その農産物を販売するには、産地や産年や品種などを証明する農産物の検査を受けなければいけないのです。この検査を通っていないと産地などをパッケージなどに表記することが出来ないのです。
つまり検査を通っていないルート(農協を通さずに農家から直接買い付ける闇ルート)で仕入れた場合は、産地などを打ち出せないことになります。中国産農産物と同じレベルの扱いです。これではブランディングなんてとても出来ません。端からビジネスモデルが崩壊することになります。
しかし、Aはこの農産物をブランディングして売る気まんまんでした。この時点で、「こいつ最初から違法で検査していない農産物をブランディングして売る気だったんだな。その際の隠れ蓑として私を利用する気だったんだな。」ということが分かりました。つまり、端から違法なビジネスを私の名義で行い、利益は半分せしめて、万が一の時は私に罪をかぶせてしらを切るつもりだったのです。
私は直ぐに撤退を決意しますが、すでに法人まで立ち上げて相当な額の機器に投資を行ってしまった後でした。しかも、農産物も既に相当数を農家から仕入れてしまっていたのです。
もはや完全に引き返せない状態になっており、泣く泣く農産物ビジネスを続けるしかありませんでした。しかし、違法行為を行うわけにはいきませんので、産地などを打ち出さないB級品として販売するしかありませんでした。せっかく中身は一流品でも、公式なライセンスがないので中国産の農産物レベルの扱いです。
普通に考えて公式な農産物検査を受けてない農産物なんて消費者が買うわけがないのですが、私はなんとかウェブマーケティングの知識をフル動員して販売を続けました。農産物はほぼ売り切りましたが、安値での販売を余儀なくされたたため、利益はありませんでした。
あとに残ったのは大型のプレハブ冷蔵庫をはじめとした機器だけです。これらへの投資分と、会社を立ち上げたコスト、会社を維持するためのコストはまるまる損失となりました。
質は良いけど知名度のない農産物をブランディングして高く売るという「美味しい話」は、質は良くてもブランディング出来ずに安売りをするという最悪の商売となってしまったのです。
おいしい話なんて無いと言う言葉の意味がよくわかりました。いや厳密にはあるのかもしれませんが、少なくても向こうから足を生やして只の凡人の所にやってくることはないのです。
ジョイントベンチャーの話が出た時は先方の意図を読み取れ
人と組んで共同ビジネスを行う際には、なぜ組む必要があるのかということをよく考えなくてはいけません。組むことで自分にどんなメリットがあるのかということだけではありません。相手にどんなメリットがあるのかということもよく考察する必要があります。
相手が自分に何を期待しているのかということです。場合によってはそれは資金でしょう。良い話を持っているのに実行する資金がない場合に、人の資金に頼るというパターンですね。これは一種の出資に近いかもしれません。自分がビジネスモデルを提供するので、あなたは資金を提供してくださいという話で、双方が無いものを持ち寄ることによりビジネスが成立するということです。
或いはマンパワーでしょう。ビジネスのノウハウを持っているけど一人では実行出来そうにないので、労働力を期待して人と組むわけです。それなら一人で起業して社員を雇えばいいのではと思うかもしれませんが、資金的にも知名度的にもベンチャーが雇用するのは大変なことです。労働力を期待されてジョイントしたわけですから、こき使われるか、場合によってはタダ働きさせられるかもしれません。自分が提供する労働と成功した暁のリターンをしっかり確認しておいて、割に合うか計算しておく必要があります。世の中、人をタダ働きさせようとする奴は想像以上に多いのです。
そして、最悪なのは影武者役です。一番質が悪い期待ですね。組んだ人を矢面に立たせて、実質的な経営者は裏から傀儡として操るパターンですね。ある種、違法風俗店の店長のような捕まり役です。
今回の話でいえば、そもそもAの中で仕入れられて販売先もあるという形でビジネスが完結しているのに、なぜ人と組む理由があるのかという点がポイントとなります。
そもそも彼は十分に資金も持っているので、こちらの資金目的ではありません。となると一番考えられるのは無料の労働力としてですが、実際労働力としても使う気満々だったみたいです。
それで留まればまだ良かったのですが、今回の件では最悪なことに違法なビジネスの矢面に立たされるところでした。これ少しでもオツムの弱い人だったら、完全に騙されるんだろうなと感じました。危うくブラックビジネスの鉄砲玉にされるところでした。
ジョイントを行う時には、相手がこちらに何を期待しているのかを見極めるのが極めて重要です。一番良いのは、相手の持っているノウハウとこちらの持っているノウハウを組み合わせることで新たな価値観を創造できる場合です。これこそが健全なジョイントベンチャーです。
それ以外の場合は、上で挙げた通り、こちらの資金狙いだったり、労働力搾取狙いであったり、鉄砲玉にするためであったり、と碌な意図がありません。先方が何を企んでいるのかよく見極めてから共同事業を行わないと、資金を失うだけでは済まず、違法ビジネスの首謀者として逮捕されるなんて事態もあり得るのです。
十分に注意して人と組むようにしましょう。