富裕層やお金持ちが老舗を好む理由 “のれん”のブランド価値とは
ネットショップで物販を行う上で、どういった商品を取り扱うのかということは大変重要です。
有名メーカー製を取り扱うことができればベストではありますが、そもそも大手メーカーであればあるほどネットショップなどに商品を卸してはくれません。
ネットショップを始めようとした時に、最初に一番大変なのは、商品をお客さんに売ることではなく、商品をメーカーから仕入れてくることです。
私はネットショップを経営していますが、売っているものはメーカー品もノンブランド品もあります。仕入れられたものは何でも売るというスタンスです。
色々と創意工夫して、ノンブランド品であってもセールスレターなどで価値付けを行っているため、ノンブランド品も問題なくバンバン売っていますが、時々妙にブランドを気にするお問い合わせも頂きます。
「おたくのご説明読ませて頂いて、ぜひ購入したいと思うんだけど、こちらの商品はどちらの会社のものなのかしら?」というお問い合わせを、丁寧な口調のいかにも富裕層でありそうな方から頂きましたが、ノンブランド品であることを告げると購入をやめるとのことでした。
少なくともある程度の歴史がある国内のメーカーの製品でないと購入したくないとのことでした。
ノンブランドでも品質には問題がないことは確認していて、自信を持ってセールスレターを書いていて、実際に結構売れているのですが、有名メーカー製でないというだけで購入を見送る人も稀にいるのです。
こういった層は、そもそもネットで物を購入すること自体あまりありませんので、ネットショップではなく実店舗であれば、こういった傾向はもっともっと顕著でしょう。
ネットでよく物を購入する層=コスパ重視でブランドをあまり重視しない層からすると信じられないことですが、こういったブランド重視の消費志向を持った層は、高齢者や富裕層を中心に意外と多いのです。
お金持ちならコストを重視しないというのは分かりますが、メーカー間の性能格差が縮まって横並びに近づいている今日、なぜブランド代を払ってまで有名な大手の製品を購入するのでしょうか。
その答えは、以前お話を聞かせていただいた超富裕層の方のお話の中に隠れている気がします。
この記事のもくじ
お金持ちが老舗や有名メーカー製を好む理由
富裕層が老舗を愛用する理由は様々でしょう。単にブランド志向なだけかもしれませんし、何らかのポリシーがあるのかもしれません。
以前、超富裕層の方とお話させていただく機会がありましたが、その方も身の回りの物を老舗の名品で固めていました。
あれだけお金持ちですから、物の値段を重視しないのはよく分かります。でもなぜ老舗の商品ばかり愛用しているのかよく分かりませんでした。
確かに長いこと生き残ってきた企業の商品ですから物としては優れているのでしょう。
しかし、若い企業の商品でももっと素晴らしい物があるかもしれないわけですし、色々と試してみないのかなあ、という疑問が湧いてきました。
そこで、大変失礼とは思いましたが、なぜ老舗の商品ばかりを愛用するのか尋ねてみました。
帰ってきた答えは単純明快で、老舗の商品が優れている云々ではなく、老舗の商品を買えば失敗が少ないからということでした。
長年培ってきた技術云々でなく、老舗企業が持つ「のれん」が重要だというのです。
老舗企業は「のれん」の信用の元で商売を行っているわけで、不祥事を起こしたり品質不良の商品を売ったりすれば、何よりも大切な「のれん」を傷つけてしまうことになります。
少し前、船場吉兆が食材使い回しの不祥事を起こし倒産しましたが、問題を起こせば数十年積み上げてきた老舗の「のれん」が一瞬で無価値になってしまう恐れもあるのです。
一方、昨年開店した地元の食堂が、食材の使い回しを行った場合はどうでしょうか。同じようにお客さんが離れて潰れてしまうでしょうが、失うものの大きさが違います。
出来たばかりのお店が潰れたところで、別の場所で全く違うお店の名前で新しく始めれば痛くも痒くもありません。築き上げた1年分の信用が壊れてもそれほど痛手ではありません。
こういったことは、出資詐欺やマルチの業界では割とメジャーで、同じ犯人グループが名前を変え場所を変えて、何度も同じような詐欺を働きます。
一度作った若いブランドが壊れても、全く新しい名前で同じ商売をまた始めることが出来てしまうわけです。
一方の老舗は、一度不祥事を起こしてしまうと、数十年、場合によっては数百年かけて築き上げてきたブランドを一瞬で失うかもしれないのです。
これは、いい加減なサービスを提供したり、いい加減な商品を販売しようとすることに対して、大きな足かせになります。
つまり、失うものが大きすぎるので、利益を上げようとして必要なコストを削ったり、いい加減な部材を使ったり、サービスの品質を落とすことがしにくいのです。
僅かなコストを削減するために、食材を使いまわしたりすれば、数十年掛けて築いた「のれん」を一瞬で失ってしまうことになりかねないわけで、普通であればそんなリスクをとるわけがないのです。まあ、船場吉兆はやってしまいましたが・・・
これこそが、超富裕層の方が、老舗を好む理由だったのです。長くやっていて技術があるからではなく、長くやっていて失うものが大きすぎるため、いい加減な商品は作らないだろうということなのです。
のれんやブランドの無い中小企業が生き残るには
このように、企業の「のれん」やブランドを重視する層も一定程度いることは確かなことです。ある程度の富裕層を相手にする際には、企業としての価値も重要になってきます。
老舗であったり大手であったりすることは、それだけで信用の塊なのです。
では、比較的若い中小企業がこういったフィールドで勝負するにはどうしたら良いのでしょうか。残念ながら難しいとしか言いようがありません。
無いブランドを補うために、名も無き企業が富裕層にアプローチする時は、営業マンが何度も通って信頼関係を構築するなどの作業が必要になります。
商品に競争力のある若い企業なら、経営状態が悪化した老舗を買収して、「のれん」を手に入れるという方法もあるでしょうか。
ただ、やはり企業の信用というものは結局時間を掛けて構築していくしか無いのだと思います。
まずは、「のれん」を重視しない層相手の商売で実績を積んで、時間を掛けてコツコツ企業としてのブランド価値を構築していくしかありません。
レターや詐欺的マーケティング手法を使ってブランド価値の幻影を作り出すことは出来ますが、本当に見る目のある人には全く通用しません。
本当の地に足ついたブランド価値というものは、あくまでも時間を掛けて積み上げていくしか無いのです。
ブランド価値を築くには長い年月が必要ですが、それが崩れてしまうのは一瞬です。日々気を抜かずに営業活動に勤しみたいものです。